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 ご法事でお施主さんに聞いたお話し

久しぶりにブログの更新です!

4月8日は、お釈迦様のお誕生日。花まつりとも言って、寺院では金銅仏のお釈迦様に甘茶をかけてお参りします。

さて今回は、 ご法事でお施主さんに聞いたお話しをご紹介いたします。

このお宅はご主人(以後Aさん)が定年退職をして、これから夫婦水入らずで、ゆっくり好きなことをして暮らしていこうかと 思っていた矢先、急な病で奥さんを一人残してあっという間に旅立ってしまいました。Aさんご夫婦にはお子さんがいらっしゃらないので、今後の心配ごとなど、 いろんなことをお話しさせていただいてました。

その後、満中陰のご法事で、Aさんの奥さんやお姉さんから、実は亡くなったAは二尊院さんがとてもお気に入りで、母の法事で来られるときは 「今日は二尊院さんが来るぞ!」っていつも楽しみにしていたんですよ。亡くなったAさんは、身体つきがガッチリしていて働き者、とて も温厚な方で、そんなお喋りというわけでもなく、、、。なので、その言葉はとても意外でした。

その後も、Aさんのご法事の度に、奥さんとお姉さん、お姉さんのご主人とお話をして、本当に此処のご親類は穏やかな人柄ばかりで、 みんな素敵な家族だなー。という印象でした。

そんな中、亡くなったAさんのご両親のご法事を一緒に行うことになり、お参りに行くことに。

お父様は25回忌、お母様は7回忌、奇しくもご命日が二人とも4月。しかも、二人とも戒名に「桜」の文字が入っており、 仲の良いご夫婦だったんでしょうね?と質問しましたら、

はい。ホントに仲の良い両親でした。特に父に対する母の想いはすごかったと。

どんなご夫婦だったか、差し支えなければ、お勤めをする前に聞かせてもらえませんか?

奥さんとお姉さんのご主人曰く、父が寝たきりになるちょっと前に結婚をしたので、実は父の想いでは床に伏している イメージしかないのですが、両親には本当に良くしてもらって感謝しかないんです。そう話すお姉さんのご主人の眼から 涙が溢れていました。

両親のことを話すときに、実の子供が涙を流すことは経験がありますが、義理の息子が涙を流すというのは、稀なこと。それほど想いを寄せておられるのだなと。

やはり、余程素敵な方だったんでしょうね?そう言うと、Aさんのお姉さんが語り始めてくれました。

おしどり夫婦だった両親ですが、父が60才を手前にして重い脳梗塞を発症し、当時で言う植物人間になりました。

医師からは、脳内の出血量からして身体も動かせないし、おそらく意識もない。言ってる事も通じないはず。

状況からして回復の目途は無いので、このまま呼吸器を付けずに看取りをするか、大変だけど看病を続けるか選んでほしい。

Aさんは、お母さんどうする?と聞いたところ、いいえ。先生。お言葉ですがお父さんは私が話しかけると、目をパチパチして 反応します。私の思い過ごしかもしれません。でも、例えどんなに大変でも、朝、私がお父さんに話しかけて、目をパチパチして反応してくれたら私は一日それを励みに 強く生きていけるので、どうか看病させてください。そう仰ったそうです。

お母様は家と病院を往復して農業と看病の両立をし、病院に寝泊まりをしながら過ごされていたようです。

そんな生活が約7年続き、その後、病院の都合で入院生活ができなくなり、在宅医療となり、家で13年間看病を続けて 自宅の布団の上で、お父様をご家族全員で看取ったそうです。その間、お母様が愚痴を言うことは一切聞いたことが無かったそうです。

本当に凄いエピソードですね。まさに以心伝心。今でいう、老々介護。誰もができることじゃないですよね。

それだけじゃないんですよ!いろいろあるんじゃけど、私が一番印象に残っている話はね。Aさんのお姉さんが続きを聞かせてくれました。

父がまだ元気だったころ、私たち家族に、「ここは海に突き出た不便な所じゃが、将来橋が架かって便利になるぞ!楽しみじゃのお。」って よく言っていたんです。

そしたら、だいぶん経って橋が本当に架かったんです。それで、「母がお父さんに橋を見せんにゃいけん!」って言って、 母は長女で兄弟からも慕われていたので、みんなに協力してもらって、父を軽トラの荷台に寝かせて、Aに運転させて、母は父の傍らに座って、 夜の橋を渡ったんですよ!暗いし、体も動かないから橋が見えたかは分からないけど。母は父に対する思いが愛情が本当に凄かった。 今だったら大事!大騒ぎになりそうだけど、あの頃はまだ長閑な時代でしたから。

母は父を看取った後、18年1人で農業をしながら過ごしました。A夫婦と同居とはいえ、口にはしなかったけど父が居なくてさみしかったと思います。

母は手記を書くのが日課だったので、Aがそれをまとめたら本が書けるよ。出版してみたら?って話したことがあるんです。

でも母は、これは私とお父さんだけの思い出として大事にしたいから、そんなの言わないでって言ってました。

そんな両親に育てられた、Aだから優しい人に育ってね。こんな風にいいお嫁さんにも来てもらって。私は本当にありがたい。

ただ残念なのは、弟のAがあまりにも早く逝ってしまったことかな。。。

そうですか。目頭の熱くなる素敵なエピソードをありがとうございました。いろんな情景が目に浮かびますね。

そんな、皆さんの想いを乗せてお勤めさせていただきます。 そう言って、夫婦仲良く年忌の法事をお勤めしました。

素敵な夫婦愛の話だったので、ご家族の許可をいただきご紹介させていただきました。

二尊院では、檀家制度を敷いておりませんが、ご法事や葬儀も受け付けております。ご興味のある方は、お気軽にお問い合わせください。

最後までお読みいただきありがとうございました。

二尊精舎 沙門智暁 合掌九拝

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